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理系の仕事の流儀【商品開発は仮説思考でスピード勝負】

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 こんにちは黒部です。
 今回は理系の仕事の流儀として、現役の機械設計エンジニアが商品開発のポイントをひとつ紹介します。仕事で新しい取り組みをする時の参考になってもらうことが本記事の目標です。ちなみに私は大手メーカ勤務で新商品開発に10年携わっており、いくつかの失敗も成功も経験してきました。

理系の仕事の流儀【商品開発は仮説思考でスピード勝負】

 新商品開発をするには、主に以下のデータが必要です。例えば新しいエアコンを開発するとしましょう。

・エアコンの市場動向
・最新の顧客ニーズ
・競合他社品の性能と動向
・自社が開発できうる製品のポテンシャル

 これらの情報をもとにどんな商品をどのように販売していくかの意思決定がなされます。量産までの過程で絶対に欠かせない情報ですね。

 しかし私が新入社員だったころには、これらの情報収集に何か月も掛かけました。確かに多くの情報を集めることには成功しましたが、そこから開発方針を固めていった結果、他社に先に似たようなものを市場投入され、更には特許出願もされていて、完全に負けてしまいました。

 では何がこの最悪の結果をもたらしたのか?情報収集のスピード?分析能力? 結論、情報を多く集めるほど良い意思決定ができるという誤解でした。

 徹底的に情報収集をしてからでは時間切れ。開発計画が後ろ倒しになり、肝心の開発方針を決めるプロセスが粗雑になります。この経験でこういった仕事の仕方には無理があるということを学びました。

 ではどうやって僕がこの状態から抜け出したのか、

 それは『仮説思考でスピード勝負』です。

 本記事では、これについて理系の仕事に当てはめて説明します。

理系の仕事は仮説思考で進める【商品開発のポイントです】

仮説思考とは

 仮説思考とは、十分な情報がない状態で自分なりに分析して仮の答えを出すことです。ビジネスパーソンとして覚えておいてもらいたいことは、『何も実行しないこと』と『遅いこと』がリスクだということです。特に知的財産「特許」においては出願日が他社より一日遅れただけで会社に甚大な損害をもたらすことがあります。

 網羅的に情報収集をするのではなく、
 限られた情報で仮説を立て、
 出来る限り早く意思決定をすることが大切です。

 最近ではアジャイル開発と呼ばれる軌道修正を前提とした短い開発期間単位を採用することで、リスクを最小化しようとする開発手法も注目されています。もはや現代のビジネスにおいては『スピード』が何よりも大切なのです。

 先程のエアコンを例にしてさらに細かい話をします。

 エアコンの室外機にはコンプレッサという空気を膨張させて冷たい空気を作り出す機械が内蔵されています。このコンプレッサの構造にはいくつか種類があり、それぞれ一長一短あります。どの種類のコンプレッサにするかを検討する場合、仮説思考をしないとどうなるでしょうか?

 開発方針と目標性能が決まってからすべての種類のコンプレッサを試作し、あらゆる実験データを取ることになります。それでは時間も経費も浪費してしまいます。

 これに対し、早い段階で仮目標値を設定し、開発を進めていきます。コンプレッサも全ての種類を試作せず、簡単な計算や過去のデータから推測し最も適しているものを仮説して試作を行います。

 こうすることで仕事を早くし、開発速度を速めていきます。この程度の仕事の進め方であればやっていると思うかもしれませんが、実際には出来ていない人やまだまだ仮説思考が不足しているエンジニアが多いように思います。

 内容によるかもしれませんが、一週間のうちに仮説検証サイクルを回していなければそれは遅いです。早い職場であれば、複数の検討項目を同時並行3日サイクルでどんどん回していきます。

仮説思考をすると仕事ができる人になる

 仮説が必ずしも合っているということは無く、むしろ間違えて失敗することも多々あります。しかしながらこの仮説精度を向上させることが経験であり、エンジニアとしての価値です。

 仮説を立て検証するまでのサイクルを高速化させることで多くの経験を積み、仮説精度を向上させることができるようになります。仮に仮説を間違えたとしても、僕の場合は早い段階であれば修正の余地が残っていることがほとんどでした。むしろ一つの可能性を否定できただけでも情報収集しているだけよりはマシなことがほとんどです。

 この仕事の進め方を繰り返していけば、確実に正解にたどりつくスピード、仕事の質が大幅に向上し、仕事ができる人になっていきます。変化がすさまじい現在社会においては「完璧だが時期が遅い」よりも「少し粗いが開発サイクルが早い」ほうが大切で、そういった人間が設計現場では重宝されます。

仮説を立てる方法

 技術者として仮説を立てる方法として、主に「演繹法」「帰納法」「アブダクション」があります。

・演繹法とは、「××だから、○○である」という論理を数珠つなぎにしていき、結論を引き出す方法
・帰納法とは、多くの観察事項(事実)から類似点をまとめ上げることで、結論を引き出す方法
・アブダクションとは、起こった現象に対して「法則」を当てはめ、起こった現象をうまく説明できる仮説を導き出す思考フレームワーク

 以上の3つとなりますが、これらは別記事で技術者が仮説思考をする場合の具体的事例と合わせて別記事で紹介していきます。

 以上が理系の仕事の流儀【商品開発は仮説思考でスピード勝負】の解説でした。エンジニアの経験値はどれだけ情報収集したか、働いたかではなく、どれだけ短い期間で仮説検証サイクルを回したかで向上していきます。読者の方にはぜひとも要領が良く仕事が早いエンジニアになってほしいと思います。